第9回シンポジウムが、3月20日(日)、東京秋葉原UDX4階で開催されました。医療関係者、研究者に加え、 メディア、また一般の方もまじえ、100名をこえる方々で会場は満席となりました。
機構設立以来満10年となり、今回のシンポジウムでは医療そのもののみならず、医療の経済性、人の生き方にも焦点をあて、 幅広い意見交換ができるような構成にしました。新薬やすばらしい医療技術の出現により、 これまで治療困難とされてきた病気に福音がもたらされる一方、財政支出における医療費の増大が懸念されています。
第一部では「最先端の医療開発」として最前線の医療と社会に及ぼす影響について、第二部では「医療とのかねあい」として医療費の評価、 患者会のこえ、ゲノム解析をとり入れた医療の方向性や、高齢化社会のとらえ方、今後の医療の位置づけなど、立場をこえて、 いろいろな角度から議論が深まりました。
会場にお越しいただいた皆さんからは、多くのご意見が届き、主催者として少なからず手ごたえを感じております。 ・高価であるが有効な医薬品がつぎつぎに世の中に出ているが、医療費をどう考えるか、さまざまな論点から意見が出され、考えさせられた。 ・新しい医療と費用の問題など、重要だがどこも正面から取り上げない課題を広い立場から議論できた貴重な機会になった。 ・「参加と還元」ということで、医療のコストパフォーマンスについて、医学の立場からも議論があったことは新鮮。 今後の研鑽を期待したい。 ・今の時代に重要な問題がいくつも盛り込まれていた。医療に関しては、空気のように思われているが、国民がもっと真剣に考え、 声を出していくことが必要。 ・ふだんの生活では触れることのない貴重な話を、一国民、一主婦として聞きました。専門家の方だけでなく、 ふつうの人がもっと多く参加するようになればと思う。 ・肺がんへの免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤への期待が高いが、薬価が高い。しかし、がんが完治すれば(費用としては) 安いとも考えられる。 ・研究/開発による成果のコストをどうしていくか難しい問題ではあるが、薬を高く決定するシステムを変えるべきと思う。 世界的に製薬会社を規制すればよいのでは。 ・医療者、患者サイドのみならず、費用負担については、財政サイド、保険サイドからの意見も聞きたかった。 ・新薬の保険適用は、薬事承認されたすべての対象ではなく、費用対効果のすぐれた適用に限り、また費用対効果が劣る適用については、 いわゆる混合診療を適用し、患者負担(民間保険加入の場合はその対象も)とする選択も考えられるのではないか。
シンポジウムの開催につきましては、会員の方々、並びに協賛いただきました法人会員の皆さまにはたいへんなご支援を賜り、 厚く御礼申し上げます。今回のシンポジウムでの議論が契機となり、当機構の活動にいっそうのご協力をいただきますよう、 どうぞよろしくお願いいたします。
【第1部 最先端の医療開発】 コーディ―ネーター 珠玖洋理事長 |
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基調講演I 「免疫チェックポイント阻害剤によるがん免疫療法」 河上 裕 (慶應義塾大学医学研究科 委員長) |
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基調講演II 「キメラ抗原受容体(CAR)発現Tリンパ球を用いた白血病/リンパ腫に対する養子免疫遺伝子療法」 小澤 敬也(東京大学医科学研究所 附属病院長) | |
「新しいC型慢性肝炎治療の生命予後と社会に及ぼす影響」 井上 和明(昭和大学藤が丘病院消化器内科 准教授) [講演内容] |
【第2部 医療とのかねあい 】 コーディネーター 清水昭理事、宮野悟理事 |
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「費用対効果評価(HTA)とがん患者会」 眞島 喜幸(NPOパンキャンジャパン理事長) | |
「薬剤の評価と薬価、そして社会の医療システム」 大坪 徹也(京都大学大学院医学研究科医療経済学教室 助教) |
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「参加型健康医療開発/ゲノム/医療の受容性」 宮野悟(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター) |
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「健やかな高齢者生活を送りましょうー不易と流行」 清水昭(国家公務員共済組合連合会三宿病院 脳卒中センター長) [講演内容] |
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「限界芸術・死亡率・H.Curans・シンギュラリティ・TPPと薬価」 色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長) |