第3回健康医療ネットワークセミナーは2月5日(火)にトヨタ九段ビル会議室で開催されました。 講師は、農林水産省のキャリアで広告代理店に出向中の長野麻子氏と東京大学医科学研究所助教の田中祐次先生のお二人。
●「ある日突然病気になって」 〜患者の思い〜 長野 麻子
農林水産省から官民交流で広告代理店に出向になり仕事もプライベートも全速力で突っ走っていたある日、突然の異変。膜性腎症によるネフローゼ症候群と診断され長期の入院生活が始まる。そこで感じたさまざまな疑問、社会との断絶、健康人と病人の壁などを、今後も一生この病気と共に生きて行くことになった一人の患者のさまざまな思いを語りました。
・もともと健康で病気をしたことがなかったので、病院のイロハも分からずに入院。
・大学病院だったのでチーム医療。主治医はいるが、病気のことをどの先生と話し合えばよいのかが分からなかった。
・病気の性質もあって退院の予定が決まらないまま2ヶ月が過ぎ、先が見えず鬱状態になった。
・この時期、病気に関する情報収集に走り、腎臓病について書かれた本を買いあさり、医者にさまざまな質問をぶつけた。医師もそれに答えてくれた。
・その結果、自分の中で納得して治療を受けられるようになった。
・8人部屋という大部屋にいたので、比較的高齢な入院患者が多く、大部屋で精神的に不安定になり心を閉ざしていく人が多いのに気が付いた。
・病人生活では話をすると病気の話になってしまい、ネガティブな話が飛び交うが、その話が真実かどうか確認する術がない。
・正確な情報へのアクセスができないことが不安。
・健康な世界と病人の世界の断絶が激しい。
・医者との信頼関係を築けるような病気に対する正しい知識を持つことが患者にも必要。
・同じ病気の人とのコミュニケーションの場、アクセスが欲しかった。
・入院によって精神的に落ち込んでいくのをケアするシステムが必要。話し相手になってくれるだけで良い。話の聞き役ボランティア。
・医療的、専門的な知識を持った人々と一般の人々とのインタラクティブな交流にコーディネーターあるいはファシリテーターの存在が必要。
・製薬会社のMRのシニアライフとして、ファシリテーターはやりがいがあるのでは?
・今後も減塩食の生活が続くが、減塩食は健康な人にも良いので、「食」と接点として健康な人と病気の人が触れあえる場があると良い。
・現在、ステロイドの副作用で糖尿病になっている。何のために薬を飲んでいるのか?身体は全て繋がっている。1点を見て治療してもだめ。全体を見ることの出来る統合医療(?)はないのか?東洋医学?
<長野麻子氏略歴>「日本のデンマーク」愛知県安城市生まれ
<私の仕事> | <私の病気> | ||||
1994年4月 | 農林水産省入省、構造改善局総務課配属 | 2007年10月30日 | 入院 | ||
1995年6月 | 構造改善局農政課 | 10月31日 | 腎生検 | ||
1996年5月 | 林野庁企画課 | 11月8日 | 膜性腎症によるネフローゼ症候群と診断 | ||
1997年7月 | 郵政省放送行政局地上放送課特定放送業務室企画係長 | 11月9日〜 | ステロイド服用開始 | ||
1998年7月 | 郵政省放送行政局衛星放送課企画係長 | <長い入院生活> | |||
1999年8月 | 人事院長期留学生派遣制度によりフランス留学 | 2008年1月12日 | 退院!! | ||
2001年7月 | 総合食料局食品産業企画課企画官 | ||||
2003年6月 | 大臣官房企画評価課バイオマス・ニッポン総合戦略検討チーム | ||||
2003年7月 | 大臣官房国際部国際調整課課長補佐 | ||||
2005年6月 | 大臣官房秘書課付き(採用担当) | ||||
2005年8月 | 消費・安全局動物衛生課課長補佐 | ||||
2006年4月〜 | 官民交流制度により広告代理店へ |
●「患者学」 〜思いを伝える〜 東京大学医科学研究所助教 田中 祐次