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事務局ニュース【NO.2015-149】

第28回健康医療ネットワークセミナー開催報告

ミッシング・リンクをつなぐ可能性
急性から慢性の多彩な症状を呈し難病化する

−マイコプラズマ感染症への先端医療戦略−

講師:松田和洋氏(エムバイオテック株式会社 マイコプラズマ感染症研究センター代表取締役/センター長)

マイコプラズマ感染症は、一般に長引く咳や肺炎を引き起こすものとして、知られています。しかし、あちこちの病院に行っても、なかなかよくならない。さまざまな診療科を訪れて、 いろいろ調べてみると、マイコプラズマ感染症だったというケースがあります。また、難病といわれるもののなかには、マイコプラズマ感染症によるものではないかと思われる病気もあり、 一刻も早く解明が待たれる感染症です。

松田先生は、血液内科での臨床経験にもとづき、感染症によるがんの発症、炎症や自己免疫疾患などとの関連を一貫して研究されてきました。

当日は、医療、企業関係者に加え、マス・メディアの方々など、約30名の参加者がありました。

マイコプラズマ感染症について表面的なことしか知らなかったので非常に参考になった、新しい診断法がもっと身近になってほしい、重症化することの危険性を痛感した、 などと参加者の方たちからは、このマイコプラズマ感染症への先端医療に期待する声が寄せられました。今後の研究の動向がいっそう注目されています。

マイコプラズマ感染症は、気管支炎の原因の第一位で、長引く強い咳や肺炎を引き起こすことが知られています。肺炎は、わが国の死因の第3位であり、 がんや心血管障害などが主病名であっても、最終的に肺炎で亡くなる方が多いことを考えると、インフルエンザとともに、マイコプラズマは身近にあって社会的影響力の大きい病原性微生物です。

保菌者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染により、家族内、オフィス、学校など、閉鎖的な空間では特に感染しやすく、健常な人でも、3〜5年に1度くらいのペースで感染するとも言われています。 呼吸器感染なので、感染しているとははっきりわかりにくいケースもあり、なかには繰り返し感染しているうちに重篤な状態になることもあります。 マイコプラズマは非常に微細なため、慢性的な感染や増殖の繰り返しより、組織の炎症や破壊、線維化など、元には戻りにくい不可逆的な症状となる恐れがあります。

マイコプラズマ感染症の従来の方法での診断可能な領域は、急性の肺炎の一部でしかありません。ですから、できるだけ早い的確な診断と予防治療によって、難病化を防ぐ手段を講じることは急務です。

申し上げたように、マイコプラズマ感染症は、咳や肺炎だけでなく、全身の血管炎や神経炎を引き起こし、さまざまな症状としてあらわれるため、他の感染症や疾患との区別がとてもむずかしい病気です。 たとえば、マイコプラズマ感染症と膠原病。原因がわからないとき、膠原病として診断される場合が往々にあり、そうなると、免疫を抑制するステロイドなどが使われます。また、小児の膠原病として知られる川崎病。 川崎病は、マイコプラズマ感染症と同様の症状を示すことがあり、原因不明の発熱や、眼球の充血、四肢の末端が赤く腫れたり、これらの症状が長引く場合やときとして後遺症につながる場合もみられます。 しかし、もしそれらがマイコプラズマ感染症であったら、その治療法が逆効果となることもあるのです。副作用の多い膠原病の治療をする前に、マイコプラズマ感染症と診断されたなら、 副作用の少ないマイコプラズマ感染症を抑える治療をする方が効果的です。

従来の診断薬の限界に対し、新しい免疫のしくみからのアプローチが突破口となることがわかってきました。脂質抗原の分子構造の解明から、マイコプラズマ感染症の原因に特異な診断が可能になってきたのです。 わたくしどものエムバイオテック社、あるいは研究機関や大学との共同研究によって、抗原の基本物質やワクチンの特許が、わが国や米国、オーストラリアなどで次々と成立しています。 マイコプラズマ脂質抗原の分子構造の解明手法については、資料をご覧ください。

免疫学の最先端の技術を駆使して、マイコプラズマ脂質抗原抗体検査が可能となり、急性から慢性期における抗体変化の実態を観察できるようになりました。マイコプラズマ感染症を早期に発見して、治療できれば、 その影響ははかりしれません。免疫不全の難病をはじめとするさまざまな病気の予防や治療につながり、未病の段階で対処できる可能性がひろがります。 さらに、この基盤技術を発展させてさらなる治療薬やワクチンの開発につながれば、わが国発の創薬として、その影響力はさらにひろがるものといえましょう。 マイコプラズマ感染症の初期には、長引く咳や肺炎の症状に加え、原因不明の皮膚症状や痛みや発熱、無症候性脳梗塞や心筋虚血、物忘れ・耳鳴り難聴・視力低下・早期認知症、免疫難病の症状、重篤な薬の副作用、 ヘルペス感染症など似た症状を呈することがあります。 そのため、症状からだけでは、マイコプラズマ感染症との区別が困難な疾病が少なからずあるのです。アルツハイマー型などの認知症、慢性疲労症候群や線維筋痛症、 自閉症/うつ病/てんかん/統合失調症などの精神疾患、湾岸戦争病、ライム病、ALS(筋委縮性側索硬化症・ルー・ゲーリック病)、微小脳血管障害、ベーチェット病、悪性関節リウマチ、ギランバレー症候群、 MS(多発性硬化症)、さらに治療困難なスティーブンス・ジョンソン症候群のような皮膚疾患などです。

現在は、自費診療として、50か所をこえる提携医療機関でマイコプラズマ感染症の検査ができます。劇的に症状が改善した例も蓄積されてきました。 マイコプラズマ感染症は、急性だけでなく、長期化・慢性化するという症状をもちあわせています。早期に発見し、治療していくことで、免疫難病や、 認知症と思われているさまざまな病気の診断や治療にもつながっていきます。感染状態を的確に把握する疫学調査や、診断・予防・早期治療のしくみづくりが望まれていますが、現在は先端医療であり、 残念ながら保険診療としては認められていません。 患者さんや医療現場からの希望や期待は大きく、厚生労働省への働きかけによって、保険適応や難病治療の適応が可能になるように努めている状態です。 マイコプラズマ感染症に特異的な脂質抗原を用いた世界初の診断法によって、急性期のみならず慢性期の病態変化を把握することが可能になり、 原因根治的な治療に結びつくようになりました。マイコプラズマ感染症対策の重要性が認知されれば、保険適応やワクチン開発の支援などにつながり、 ひいては社会保障において、高騰する医療費や高額医療費負担の増加の問題を軽減する医療になることが期待されています。また、なかなか日本発の創薬技術や知財がビジネスに結びつかず、 医薬品開発が空洞化する現状にあって、医学分野のミッシング・リンクをつなぐ潜在的需要もあり、大きな成長性が見込め、将来的に大きな成長産業になると考えております。

今回のテーマについては、こちらの参考資料をごらんください。

以上

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