トップページに戻る | 一覧に戻る

事務局ニュース【NO.2014-139】

2014年度第3回GDHDパーティ開催報告

2014度第3回GDHD『偶然の出会いは必然の出会い(Guzenno Deaiwa Hitsuzenno Deai) 』が、2月10日(火)、 学士会館で開催され、60名をこえるさまざまな分野の方々で、いつものように熱気につつまれました。

今回は、GDHDの生みの親、当機構横山禎徳理事の登場です。東大特任教授として、社会人のための全人格的教育プログラムであるEMP(Executive Management Program) をつくった社会システムズ・アーキテクトの立場から、現在の医療システムがかかえている課題、その解決への糸口をお話しいただきました。 p>

『社会システム・デザイン』アプローチによる医療システム改革

キー・プレゼンテーション:横山禎徳(社会システムデザイナー、健康医療開発機構・理事) 【参考資料】

 

『超高齢化社会』の経営

GDHDというプログラムを考えたとき、単なる名刺交換会ではなくて、中味のある話ができるように、15分ほどのスピーチを話題提供としてデザインして、いろいろな先生方にプレゼンテーションをお願いしてきました。 この会は不思議な会でして、今日も話題のきっかけとして話をしますが、その後は私の話とは関係なく皆さんご自由にお話しください。私個人としては、15分でしゃべるのはもっとも不得意で、雑談、余談がいちばん好きでして、interesting but irrelevantな話をするのが楽しみです。今日は、それができないと言いながら、してしまっていますが・・・。さっさとやります。

なぜ、ど素人なのに、医療にかかわっているかというと、いま医科研におられる上昌広先生から、医者というものは世の中の変化にもてあそばれているような気がする。やはりマネージメントを知らないといけない。その教育をしてくれというところから始まり、もう20年くらいになります。この15年ほどは、医科研のゲノムセンターのぼろい方のビルの2階で、社会システムの枠組みのなかで、医療システムをデザインする作業をやってきました。一応、国の医療システム・デザインをまとめたところです。医療というものを見たときに、いくつか感じている課題をざっとお話ししましょう。

日本の最重要課題は、『超高齢化社会の経営』ということです。『少子高齢化』という言葉は、この部屋を出たら、使わないでいただきたい。少子化と高齢化というものは、まったく違うものです。少子化は社会学的現象、高齢化は生物学的現象で、一緒には考えられないものであり、少子化については、フランス、ドイツ、スウェーデンでは、もう答えを出しています。

『年齢不詳化社会』という発想

超高齢化社会、なんでみんなこんなに長生きするのか。これが大きなテーマなのに、自民党も民主党もそれにちゃんと向きあっていないのは問題です。 皆さん、超高齢化社会がたいへんだとおっしゃるばかりですが、どのように対応していくべきか。『年齢不詳化社会』という補完的発想を加えてアプローチすることが、 一番正しいやり方ではないかと思います。ひとつ例をあげます。ケンタッキー・フライドチキンの前に、コーネル・サンダースが立っていますね。あの事業を始めたとき、彼は62才なんですよ。

『年齢不詳化社会』という発想をしないで、65才や75才など、年齢で区切りをつけていたら、社会保障はもたない。また、寝たきり老人はなぜ日本に多いかというと、 寝かしておくから「寝たきり老人」、起こせば「起きた老人」、歩かせれば「歩く老人」です。ここでしゃべらせれば「しゃべる老人」になる。だから、 どういう意志をもつかということが大事なのです。いま一番大切なのは、「目的をもって、活動的で、ちょっと稼いでくれる老人」をつくること。そうすれば、 社会保障は非常にうまくいくようになる。厚労省や経済学者が考えるようなことでは、答えは出ませんから。

日本人の個人資産は1,500兆円と言われていますが、あれは金融資産。非金融資産である不動産も加えるべきです。日本の個人は、3,000兆円持っている。 そのうち7割が65才以上のものとすると、2,000兆円となる。日本政府は貧乏ですが、日本人は豊かなのです。それを使わせないのが、現在の日本の医療。 だからといって、アメリカ的にしろとか、株式会社にしろとかは言いません。

使ってもらえばいいじゃないの、ということです。医療といえども、やっぱり消費なんですね。1961年以来の国民皆保険は、従来は感染症対策中心でした。 それが、逆人口ピラミッドの構成になり、慢性病中心になってきた。長期間にわたりコストがかかる。医療システムは、労働集約型で、Co2発生の少ないベストな経済活動です。 加えて、医療を産業というより医療システムとしてとらえて、『超高齢化社会経営』の文脈の中で、それぞれの関係分野を横に連携しながら、事業をうみ出していく発想が大切です。 私の『社会システム・デザイン』は方法論あってこそで、それは、『悪循環』を発見し、『良循環』を創造し、それを駆動するエンジンを組み立てていくことです。

『医療システム・デザイン』のためのアプローチには、5つの仮説があります(資料参照)。そのうちのひとつは、受け身ではなく情報を選び、積極的に自分の病気を管理する能動的患者の必要性。 そのような患者を支える多様な職能の人材提供。例えば喘息の場合は、『熟練患者』の認定と活用があります。また、『同世代内相互扶助』の考え。 お金持ちには、病気が治った時の感謝の気持ちのあらわれとして、退院間もない気分が高まっているうちに寄付してもらう。この『お礼寄付』は、同世代の相互扶助になります。

ちょっと前の2006年の資料ですが、人口2割にあたる65才以上の高齢者の国民医療費が、全体の約5割をしめています。なぜもっとも資産のある65才以上の年齢層に多額の国民医療費を使うのか。 この層からお金を集めるシステムを医療に組み込むことこそ今後の課題です。

話のきっかけとして簡単ですが、今日はここまでとさせていただきます。

トップページに戻る | 一覧に戻る