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事務局ニュース【NO.2014-129】

第9回 理事会・総会のご報告 -人と情報のプラットフォームづくりへ-

6月2日(月)、東京神田・学士会館で、理事会に続いて第9回総会が、出席者21名(委任状提出者56名)のもと開かれました。 宮野悟理事が司会をつとめ、武藤徹一郎理事長が議長に選任され、2014年度の活動方針・予算案が承認されました。

設立から8年目をむかえた2013年度は、TR周辺の社会状況の変化がいっそう加速しており、当機構の取り組むべき課題や機構内の組織においても、 再検討が迫られています。機構の中心をなすTRの推進については、2012年度よりゼロベースで見直しを図っていくことを活動の大きな柱に据え、 組織構造や設立以来活動の核であった重点課題等検討委員会のあり方についても広く意見を求めてまいりました。 本年3月2日には、2013年度の集大成として、シンポジウム『未来志向の漢方――ポジティブな多世代共生社会を目指して――』を学士会館で開催しました。 医療従事者、研究者の方々に加え、メディア、企業、さらに学生、一般の方々など120名を超える方々に参加いただき、会場は熱気を帯びました。

9年目にはいった本年度は、私どもが果たすべき役割とは「TR事業の出口戦略において重要な機能を提供する、 産学官の総合的な人と情報のプラットフォームを提供すること」だと考えています。

トランスレーショナル・リサーチ(TR)という言葉さえなかなか認知されていなかった設立当初から、 少壮研究者に発表の場を提供、研究を後押ししつつ、TRの啓蒙、啓発に注力してまいりました。当初の具体的な課題のいくつかは、 多様な形で社会の中で実現、実践されつつあり、「医師主導による治験」の推進など当機構もそうした流れに微力ながら貢献できたと自負しています。

このような状況変化を受け、本年度も、「人と情報」のプラットフォーム形成に更なる重点を置きます。 当機構がつねに新しい情報と共に新しい人々を引き寄せる…そのような発展的サイクルを回すエンジンとなるべく、 「目的意識を明確に共有したコミュニティ」と、「交流することそのものを目的としたコミュニティ」の2種類を想定し、 適切なかたちを選択しながら、各活動にふさわしいコミュニティ形成を実現するべく、後者については、 若手研究者と企業などの出会いの場としての『偶然の出会いは必然の出会い〜GDHD』パーティの充実などを目指していきます。 テーマにこだわることなく幅広い話題で知的にもりあがろうと始まったこのシリーズも、皆さまの幅広い支持をいただき、4年目になりました。 今年度も3回のパーティを同じ学士会館の同じ場所で開催。毎回15分程度の多様な医療関係者によるプレゼンテーションで会話のきっかけを提供しております。 キー・プレゼンテーションのテーマを『健康ネットワークセミナー』で掘り下げたり、また実際に研究者と企業の偶然の出会いが必然の出会いになったケースも出現いたしました。 今後は、特に若手研究者の参加率向上のために積極的なアプローチを展開していく方向です。

総会の後、当機構・理事である上田龍三理事により講演が行われました。

日本発のSeedsをベッドサイドに -白血病に対する新規抗体薬(Mogamulizumab)開発研究の歩み-

上田龍三先生 (愛知医科大学医学部腫瘍免疫講座・教授, 健康医療開発機構・理事 ) 講演資料

ATL(成人T細胞白血病リンパ腫)というウィルスで感染する白血病をご存じでしょうか。

主として、母乳によりヒトTリンパ球向性ウィルス1型(HTLV-1)が感染し、わが国では沖縄、九州など西南日本を中心に、 最近では各大都市圏にも拡散し、キャリアは約100万とみられています。キャリアの生涯ATL発症率は約5%、潜伏期間は50‐60年(発症平均約年齢57歳)、 毎年約1000人が新患として発症しています。ATLという診断がつくと、2年をこえる生存率は10%台、約50%の方が1年内外に亡くなり、化学療法もほとんど効かず、 たまたま条件の合った骨髄移植で治るケースがあるという白血病のなかでも標準治療法が確立していない非常に予後が困難な病気です。

1977年にこの疾患が概念として確立され、1981年には原因ウィルスを発見、地道な基礎研究が長期間継続されてきました。 この基礎研究を受けて、臨床への橋渡し(TR)、アカデミアと企業の協同による治験、薬事審査を経て、 日本で初めてがんに対する抗体薬が上梓されるまでの道のりは産官学の連携が結実したものといえます。 更に、この抗体薬が正常細胞では機能を持った「制御性T(Treg)細胞」と反応することを見出し、現在、新しいがん免疫療法として 「固形がんに対するTreg除去療法」を全国7施設共同による医師主導治験として開始しております。

健康医療開発機構が標榜するオールジャパンによるNetwork of Networksの根幹はTRにあります。 Seedsを患者さんに届けるということがどのような経過をたどるのか、来年度から発足される独立行政法人日本医療研究開発機構、 いわゆる日本版NIH(国立衛生研究所)構想における基礎研究の意義など、TRがいかに展開されていくか、注視していきたいと思っております。

 以上

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