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事務局ニュース【NO.2013-116】

第8回 理事会・総会のご報告

5月31日、東京神田・学士会館で、理事会に続いて第8回総会が、出席者18名(委任状提出者56名)のもと開かれました。 宮野悟理事が司会をつとめ、武藤徹一郎理事長が議長に選任され、今年度の活動方針・予算案が承認されました。 設立から7年目をむかえた2012年度は、時間の経過とともにTR(橋渡し研究)周辺の社会状況が大きく変化していることを鑑み、 特に重点課題等検討委員会サブコミッティの構成についても、見直しを図りました。ゼロベースでの組織再編を念頭におきつつ、 機構草創期にサブコミッティを取りまとめ、ご尽力をいただいた世話人の先生方に、機構の今後の運営・活動の方向性についてご意見をうかがいました。 また、重点課題等検討委員会全体としては、目的意識を明確にした出会いの場として、今日的なTR事業の出口戦略に重要な産・学・官の総合的な人・ 情報のプラットフォームづくりについて、引き続き議論することにしました。本年3月3日にはシンポジウム『DNAの新世界―21世紀のあなたの健康と医療―』を 東大医科学研究所講堂で開催し、医療関係者、研究者、メディア、企業、さらに一般の方々も多く参加いただき、会場は満席となりました。

8年目となる本年度は、重点課題等検討委員会の中に昨年度発足した『健康・医療への橋渡しサブコミッティ』で、 出口戦略も視野に入れた産学官の共同体制づくりや推進に有用な人と情報のプラットホームづくりと、その提供を課題としていきたいと考えております。 『漢方医学の新規臨床エビデンス創出の支援サブコミッティ』は、本年度より『効率のよいヘルスケアのための漢方医学の活用サブコミッティ』として、 超高齢化社会を迎えて、病気そのものより人間をみる漢方医学を医療のみならず、予防医学、介護の分野でも活用できるよう支援体制を整えていく方向です。 『健康医療とお金に関する検討会』では、従来の直接・間接金融を補完する新たなお金の流れを、先端医療分野や地域医療・介護福祉分野において実現できるよう関係者と の連携を引き続き図る予定です。『医療のまちづくりサブコミッティ』では、高度先進医療施設における安全で迅速な臨床試験を実施し新規医療開発を可能にする 医療クラスターを核としたまちづくりを実現するために本年度も活動を推進していく予定です。『中国・アジアとの連携サブ・コミッティ』では、 エネルギーとスピード感を持った中国をはじめとするアジア各国の力と勢いを活用し、国内シーズのTR推進につなげていくことができないか、検討していく予定です。

テーマにこだわることなく幅広い話題で知的にもりあがろうと『偶然の出会いは必然の出会い〜GDHDネットワーク』シリーズは3年目を迎え、 回を追うごとに参加者も増えています。今年度も3回のパーティーを同じ学士会館の同じ場所で開催。毎回15分程度の多様な医療関係者によるプレゼンテーションで 会話のきっかけを提供します。特に研究者の参加向上のために積極的なアプローチを展開していく方向です。 昨年度再開した『健康ネットワークセミナー』では、幅広い分野からテーマを模索し、できる限り「誰にでもわかりやすい」内容を目指して運営を行います。 本年度は、『未病社会の診断技術研究会」との連携を強化し、『未病社会の診断技術研究会』の体制拡充を受け、共同広報などさらに一歩踏み込んだ形で協力していく 予定です。

総会の後、国家公務員共済組合連合会・三宿病院脳卒中センター長 (当機構・理事である清水昭氏による『健やかに老いるー生活習慣病の改善・老化に伴う病気に罹らない様にすること』について、 また神奈川県保健福祉局参事監(医療政策担当)兼政策局参事監(国際戦略総合特区担当) である首藤健治氏による『ヘルスケア分野における新たな価値の創造」について、講演が行われました。

健やかに老いるー生活習慣病の改善・老化に伴う病気にかからないようにすることー』 (要約)

清水昭先生 (国家公務員共済組合連合会三宿病院・脳卒中センター長, 健康医療開発機構・理事 ) 講演資料

私が勤務している三宿病院脳卒中センターは、19床で専門の医師15名、看護師陣21名に加え、30名のリハビリスタッフを擁し、 入院初期からのリハビリ治療を行っております。 血栓を溶かすt-PAという薬を投与する治療について、関東圏内で有数の実績があります。これは、受付の事務の方から始まり、 検査技師、X線技師、看護師さん、医師、すべての部門の協力がないと成り立たない。この体制を4年前につくりました。 この薬によって、その後のリハビリ等々もあり、麻痺になる患者さんが1.5倍減るという結果が出ています。投与に際しては、どうしても診断に時間がかかるため、 今では発症後4時間半での使用も可能になったものの、やはり2時間以内に病院に到着していただくことが望ましいです。 言語障害や片麻痺の症状を伴って運びこまれた患者さんの通常の頭部CT画像では異常が認められなかったが、CT潅流画像やCT血管造影で、 梗塞のために虚血状態になっている個所が発見され、t-PA投与により、数週間後に全く手足の麻痺なく退院され、社会生活に復帰されている方が多くいらっしゃいます。

さて、このような症状を引き起こす原因は、生活習慣病が大きく関わっています。まず、肥満。腹囲、男性は85p、女性90cm以上で、 加えて高血圧(上が130mmHg以上または下が85mmHg以上)、糖尿病(空腹時血糖値110mg以上(1d?当たり))、高脂血症(中性脂肪150mg以上(1d?当たり) またはHDLコレステロール40mg未満(1d?当たり))の3つの要素のうち2つ当てはまると、メタボリック・シンドロームと診断されます。 いまや該当する人は1,000万人を超え、予備軍を合わせれば2,000万人を超えているのです。これら4つの要素を持っていると、全く持っていない人に比べ、 心臓疾患の発症危険度は36倍になります。

かつて長寿を誇っていた沖縄は、徹底した車社会、運動不足、食の欧米化などから、いまやダントツで肥満大国ですが、肥満の大きな要因である内臓脂肪について、 肥満になればなるほど善玉ホルモンの一種アディポネクチンの分泌量が低下、同じ肥満でも皮下脂肪ではなく内臓脂肪が元凶とみられ、 アディポネクチンの分泌量を一定に保つと動脈硬化の進行を遅らせることができます。この分泌量を増やすにはどうしたらいいか。本日の話のポイントですが、 運動が必要です。ウォーキングを取り入れるだけで、数か月で効果が出て、ウエストサイズが小さくなれば、アディポネクチンの分泌量が増えたと考えてよい。 大豆や米ぬかを摂取することも効果があると言われています。 運動すれば、生体のエネルギー源であるミトコンドリアも筋肉内で増え、細胞内のミトコンドリア機能が上がると、糖や脂質の代謝を促進し、 血糖や脂質を下げるのです。また腹八分目を守ると、筋肉内のミトコンドリアの量が増え、その活性も上がるのです。病気になってから治すより、 病気になる前に生活習慣で予防するのが効果的なのです。運動、アンチ・メタボな食事、禁煙、そして症状が出ていたら、お薬できちんとコントロールすることを忘れないでください。

生活習慣についての研究については、近年欧米でも発表されていますが、わが国では、貝原益軒先生が83歳の1712年に実体験から『養生訓』を書かれています。 長寿を全うするための身体の養生だけでなく、こころの養生も説いているところが特徴です。

さて、高齢化社会を迎えた日本では、自然を支配し、個人を基調にした社会システムから、協調性や利他の精神に基づく生活が見直されてきているように思います。 また、かつての日本では自宅で最期を迎える人は8割ほどいました。ところが、今では死をタブー視するような社会になっています。 京大のカール・ベッカーさんも日経の夕刊(本年5月25日付)に、子ども達への死生観教育の必要性と、死はすべての終わりではないのだ。 人間は個として生きておらず、社会の横のつながりと同時に、時代時代の縦のつながりがあると書かれています。 医療だけを切り離さず、教育・福祉など全ての分野で、人と人、人と自然、人と先祖が繋がりあう日常生活を目指し 、明るく・楽しく・朗らかに日々を過ごしながら、死を受け入れて素晴らしい人間になっていく。 健やかに暮らした後に、全ての人々が家族・地域・自然に見守られ、満たされてお迎えを受け入れる事ができると素晴らしいですね。

【食生活のポイント】

●三食はきちんと、特に朝食が大切
●薄味(食塩8g以下)で脂肪(特に動物性炭水化物)を控え目に
●ゆっくりと噛んで腹八分(食べ過ぎ厳禁)
●彩り良く野菜料理をたっぷりと。一日に緑黄野菜120g以上、淡色野菜230g以上、合わせて350g以上を摂るのが目安
●ビタミンと食物繊維も多く摂る
●アルコールやジュースの飲み過ぎにも注意
●食事は2〜3日、一週間単位で考える
●老化に伴う病気に罹らない様にしよう(日赤・吉次先生)
●毎日1時間以上笑顔で歩こう
●6-7時間の睡眠をとろう
●昨年以上の書物を読もう
●水をたくさん飲もう
●朝食は王のごとく、昼食は王子のごとく、夕食は一文無しのごとく食事をしよう
●瞑想の時間をとろう
●毎日少なくとも3回は笑おう
●雑談に貴重な時間を費やさないようにしよう
●自分でコントロールできないことにネガチブな考えを持たないようにしよう
●他人を憎むのに時間を費やすには人生は短すぎると考えよう
●すべての人に対して万事を許そう
●羨むことは時間の無駄と考えよう
●度を越すことなく、自分の限界を守ろう
●毎日他人に何か良いいことをしよう
以上

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