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事務局ニュース【NO.2012-104】

2012年度第1回GDHDパーティー開催報告

4回目をむかえた2012年度第1回GDHD。「偶然の出会いは必然の出会い(Guzenno Deaiwa Hitsuzenno Deai)」が7月19日(木)、研究者、医療、メディア、企業など様々な分野から、80名を超える参加者を迎え、学士会館で開催されました。 いつも同じ場所、同じ料理、いつ来ても同じ安心感。何度でも参加して、会話を楽しんでいただきたい。そして、一番来ていただきたいのは、若手研究者の皆さん。多彩な方々との新しい出会いの場をこれからも提供していきたいと考えています。

今後のスケジュール  

●第2回 10月22日(月) 

ショート・プレゼンテーション 土屋了介先生(健康医療開発機構・理事、公益財団法人がん研究会・理事)

●第3回 2013年2月18日(月)

ショート・プレゼンテーション 真田弘美先生(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻、老年看護学/創傷看護学分野・教授)

キー・プレゼンテーション 『To be specialized or multi-directional?−現代の複雑系疾患群の病態解 明と治療法開発のための新しい視点−』(抄録)

宮崎徹教授 (東京大学大学院医学系研究科・疾患生命工学センター・子病態医科学部門)

細胞が機能分化して系統決定、Image commitmentされていくことは、専門領域をさらに深化させ、専門家として社会的に認知され安定していくプロセスと似ている。九州から東大医学部、熊本大学で遺伝子操作の分野に入り、仏ストラスブールで免疫学、さらにスイス・バーゼルの免疫学研究所で研究室を持ち、免疫学の研究が成熟して、その世界ではどこに行っても、みんなが自分を知ってくれているという状況になった。

もともと研究に足を踏み入れたきっかけは、病気を知りたい、病気の全容を知りたいということだった。医療に関わっていると、さまざまな検査をしても結局病気がよくわかっていないため、対症療法しかできない病気が多い。リュウマチを含め自己免疫疾患などはまさにそうで、難しい、費用のかかる検査をしても最後はステロイドしかないとなる。 なぜこのようなことが起きるかといえば、病気全体が見えていないからであり、根本的な病気のメカニズムを理解していないからである。免疫学の専門家であるだけでは、自己免疫の病気すらよくわからないと気づき、とにかく全方位指向性に変えよう。免疫学の専門家をやめよう。あらゆる方向からひとつの病気にチャレンジしてみようと思ったのが、ちょうどテキサスにいたときだった。勇気がいったが、まだ若かったからできたのかもしれない。糖尿病や動脈硬化の学会に行っても、常にnobodyで、苦労の連続であった。

ただ、このような方向にいったのは、AIMという、我々が血液の中に持っているタンパク質の分子を発見したころで、これを研究していくと、どう考えても全方位指向でないといけない。AIMがさまざまに作用している。いろいろな現象に関わっていて、ひとつの生理現象が恒常性を保たれている。AIMが動くことにより、いろいろなところが動いていくとわかってきた。免疫学だけ知っていても、AIMの機能はわからない。

非常に苦しんだものの、5、6年がんばると少しずつ成果が得られ、6年前に東京に戻って、さらに多方向性から研究している。

現代病というのはいろいろあり、肥満に基づいてみると、糖尿病、動脈硬化、肝臓病とか自己免疫とか、一見ばらばらな病気があるが、すべてにAIMが関わっていると最近わかってきた。なぜ現代にこのような病気が増えているか理解しようとすると、糖尿病もしらないといけない、がんも、脂肪も免疫学も、何もかもできないとならない。できた上で、全体を組み合わせて考える必要があると最近つくづく思う。

たとえば、糖尿病など単独の病気を徹底的に治療すると、他のところにゆがみがきてしまう。だからこそ、全体をregulateするようなシステムを見つける。それがAIMの研究を通じて実感したことである。

自然現象はオーケストラのようなもの。正常な響きはきれいで、病気になると響きは乱れる。たとえば、バイオリンが音程をはずし、響きが乱れているのであれば、そこを治せばいいのだが、どうもそうではない。さまざまな原因が同時に起きているし、へたするとみんなちゃんと演奏しており、どこにも間違いがない時もある。サントリーホールで演奏していたオーケストラが、風呂場に持っていかれたら、響きがだめになる。

響きをもとに戻す。病気を治すためには、その指揮者を見つけ、システムなり分子なりに着目して、アドバイスしてやらないとならない。これがAIMであって、指揮者を指揮するわけである。バイオリン、ホルンと、とりあえず一通り弾き方を知っていて、ミックスした響きを頭の中でイメージできないと、病気や生命現象は最終的にわからないのではないだろうか。

機能分化して最終的なところまで行けば、専門家として認知され、みんな知ってくれているという安定した状態になるが、その分野の人としか話さなくなり、生命現象とか病気の全体を眺めることがなかなかむずかしくなる。一旦専門領域を出ると、予想外の発見があるかもしれないが、一匹狼になり、どこの学会に行っても、半端者になり、グループに入れず共同体ゆえの恩恵にあずかれない。いろいろなところから声はかかるが、身内にはなれず、常にお客様。サポートがないので、自分でやるしかない。

専門家か全方位指向性か、どっちがいいのか。私は全方位指向性でやっていくしかないが、言ってみれば、一生をかけた実験であり、最後まで答えは出ないのではないだろうか。

※宮崎徹先生の講演資料はこちらからご覧いただけます。【講演資料:PDF版

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