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事務局ニュース【NO.2012-102】

第7回 理事会・総会のご報告

未来はとっくにはじまっている

5月31日、東京神田・学士会館で、理事会に続いて第7回総会が、42名出席のもと開かれました。 宮野悟理事が司会をつとめ、武藤徹一郎理事長が議長に選任され、今年度の活動方針・予算案が承認されました。 設立から6年目をむかえた2011年度は、TR(橋渡し研究)周辺の社会状況が大きく変化し、当機構の取り組むべき課題も種類・性質において再検討すべき過渡期となっています。 機構の中心をなすTRの推進について、ゼロベースで見直しを図り、設立以来の活動の核であった重点課題等検討委員会のあり方についても広く意見を求めてまいりました。 本年3月4日には2011年度の集大成としてシンポジウム『震災後1年━健康と医療の再生に向けて━』を東大医科学研究所講堂で開催し、 医療関係者、研究者、教育関係者などに加え各メディアから参加者は約150名におよびました。

設立から7年目を迎えた本年度は、重点課題等検討委員会の中に新しく『健康・医療への橋渡しサブ・コミッティ(昨年度までのサブ・コミッティ1〜4を統合)』を設置し、 細胞・再生・遺伝子等の医学研究領域における視点に加え、理学・工学・農学等の関係諸分野の視点、 さらに医療の受益者であり新規医療開発のサポーターである社会との関係性という視点を一体的に取り込み、 相互作用によるイノベーションや課題突破につながる活動を計画しています。

『漢方医学の新規臨床エビデンス創出の支援サブ・コミッティ』では、漢方の有用性についてシンポジウム『21世紀漢方フォーラム』を開催し、 高騰する漢方生薬のため、国内生薬栽培への移行を支援し、持続可能な漢方医学のあり方を考えていきます。

『健康医療とお金に関する検討会』では、従来の直接・間接金融を補完する新たなお金の流れを、先端医療分野や地域医療・介護福祉分野において実現できるよう関係者との連携を図る予定です。

『医療のまちづくりサブ・コミッティ』では、患者さん本位の医療の中で、臨床試験を安全で迅速に行い、新規開発医療を少しでも早く患者さんに届けるため、 医療クラスターを核としたまちづくりの実現に向けての研究会やシンポジウムを計画しています。

『中国・アジアとの連携サブ・コミッティ』では、日本のみならずアジア全域でのTR推進を目指し、主に資金調達と臨床試験の効率的な実施の側面を中心に検討を行う予定です。

機構では昨年度よりテーマにこだわることなく幅広い話題で知的にもりあがろうと『偶然の出会いは必然の出会い〜GDHDネットワーク』シリーズをスタートさせました。 回を追うごとに参加者も増えてきました。今年度も3回のパーティーを同じ学士会館の同じ場所で開催。 毎回15分程度の多様な医療関係者によるプレゼンテーションで会話のきっかけを提供します。 特に研究者の皆さんには積極的な参加を促し、現在の研究や新たな活動へのヒントを得て帰っていただこうと、リピート参加の方には『友呼び』をお願いし、一層の発展を目指します。

総会の後、大塚製薬工場研究開発センター・特別顧問である松本慎一氏による『糖尿病の世界の先端医療の現況について』と、 司会を務めた東京大学医科学研究所教授である宮野悟氏による『パーソナルゲノム時代の私たち』について、講演が行われました。 糖尿病の治療は、高額な治療費に加え、一日に何度もインスリン注射をしなければならず、患者さんの負担ははかりしれません。 二層法の膵臓保存を導入した画期的な膵島移植をはじめ、提供臓器に頼らない『バイオ人工膵島移植』へと、松本氏は常に研究の前線に立ってこられました。 インスリン投与からの長期離脱、圧倒的なドナー不足、そして免疫抑制剤を必要としないブタ由来による人工膵島の移植は、現在国際的なスケールで治験がすすめられており、 オールジャパンで根治療法の確立が急がれています。国際間グループでの競争から抜け出していくスリリングな経緯など「やられたらやり返す」「やられたら徹底的にやり返す」と、 障害を乗り越えていくチャレンジングな姿勢はたいへんな共感を呼び、次のメッセージが伝えられました。”If you can imagine it, you can achieve it. If you can dream it, you can become it.”

ゲノム情報の解析とは、『私』の細胞の染色体にあるDNAを構成している30億文字から構成される文字列をコンピュータで読めるようにすることです。 2003年には13年の歳月と1000億円かかった『私のゲノム』は、来年には1時間10万円、2020年には1時間以内1万円以下で可能になるとみられ、 膨大なデータ解析を行うスパコンと最先端のインフォマティクスが必要不可欠です。 パーソナルゲノム解析の中核を担ってきた宮野氏からは、わが国が置かれている深刻な状況が示唆されました。 現在、臨床シークエンスの時代に突入しており、東大医科研では血液がんや消化器がんには最適な治療法や治療薬量の決定、副作用の回避などに応用されています。 ゲノム医療革命は、病気の予防・早期発見、多様な治療法の提供、個別化医療へと「未来はとっくにはじまって」いるのです。 国家規模でゲノム情報を基盤とした医療・ヘルスケア戦略を確立している米国に比べ、わが国では医療政策の中でゲノム解析をどう位置付けるかまだ定まっておらず、 立法化を含む支援体制づくりが課題となっています。

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